人は困れば知恵を出すはず?。2019/01/16 22:34

 書評では、理想論だけでは現実は変わらないなどと批評されることが多いが、いつも真っ当で本質を突いた著作を世に送り出している井手英策氏の最新作「幸福の増税論--財政はだれのために」を読了。
 連帯責任から「コミュニティの落伍者」を「救済」せざるを得なかった江戸時代から続く「勤勉・節約」の勤労を貴ぶ通俗概念が、ホントは弱者を助けることへの嫌悪の底流になっていること、自由の裏腹ではない「自己責任論」に通底していることを鋭く指摘しているほか、日本独特の痛税感の高さの背景、経済成長に依存する再分配モデルの限界・破綻、尊厳ある生活保障の実現の手段としてのベーシック・サービスを給付の軸とする給付概念の転換などから、財政のあるべき姿をわかりやすく述べている。
 特にこの著作はわかりやすい、若い人に特に読んでほしい。
 
 彼の思想はもっと理解されるべきだと思う。
 サンダースやコービンのような政治家ではないけれど、理不尽を理不尽と勇気を持っていえる人を応援したい。

 この冷たいというか不安で常温的な無関心社会を税金で温かな互恵関係に根差した自己選択可能な社会に変えられるなら、これ以上若い人をすり潰さないですむ。税金が取られるものと感じる社会が貯えと実感できる社会に変われば、安心だ。

 あのような後書きを書かせてしまった前原先生は猛省するべきだが、彼の思想を受け継ぐ人が若い人からきっと出てくるだろう。弱者となった年寄りがそれを助けないでどうする?

 とことん困らなければ、人は変われないのだろうか・・・(歴史はそうなっているけど)。

人類の宝を鑑賞する。2019/01/20 22:02

 土曜日は、東京国立博物館で開催されている特別展「顔真卿-王羲之を超えた名筆」を鑑賞しに上野へ。
 目当ては、この機会を逸すると、一生観ることはないだろう台北国立故宮博物館所蔵の人類の宝、顔真卿筆の「祭姪文稿」。
 入館時(正午頃)は、「祭姪文稿」の展示を観るには、約1時間待ち、自分が観終わったときには、2階の回廊を1周ぐるりと回る行列になり、多分2時間以上待ち、入館するにも外に大行列ができていた。昼食時の正午を狙って入館して正解。

 「祭姪文稿」は、伊集院静氏が「眺めているだけでこころが洗われる」と表現していたが、顔真卿の生きざまが凝縮されたような心情が迸るような筆致。
 展示にある彼の一生の解説と合わせ、信念に生きた顔真卿のすさまじさが感じられ、高校時代に簡単に世界史で習った人物をまさに再発見、血が通った瞬間だった。

 本場台湾でも滅多にない。更に言えば中華人民共和国では、今のところ観る機会が訪れそうもない作品なので、日本のお客さんより断然中国人の方が多かった感じ(行き交う言葉はみな中国語)。
 我々と違って、漢語は当然すらすら読めてしまうので、じっくりと作品を読みこんでいるせいか、鑑賞の列がなかなか前に進まない。顔真卿のほかには、懐素筆の「自叙帖」でも中国の人は、動かなくなっていた(これは草書の名筆)。

 今回の展示では、古代の篆書、晋の王羲之に始まる中国の書の系譜を顔真卿のほか、唐の三書家、張旭、懐素などの名書家の拓本、真筆を通して、分かりやすく解説しており、とても勉強になった。
 更に顔真卿らの後世中国、日本への影響などを、宋の蘇軾や最澄、空海の作品を展示しながら、解説されており、とても充実した特別展だった。
 平日にゆっくり観る機会があったら、漢文は速く読めないので、できたら解説付きでもう一回観れると良いなぁ。顔真卿のふくよかな楷書、結構好きになった。
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 日曜日は、電車を乗り継いで、久しぶりに世田谷松原のメキシコ料理店「ミカサ・ツカサ」で家族で昼食。
 ワカモレとメキシコビール、タコスにアボカド・スープまたはポソレ・スープ、20年近く付き合っているけど、ここの料理はホントに美味しい。皆満足して、昔住んでいた家の近所を散策して、帰投。
 シェフの奥さんもご主人も僕らと同じだけ年をとった。いつまでも健康で頑張ってくれたらと心から思う。

【最近の読書の覚え】
・南彰/望月衣塑子著「安倍政治 100のファクトチェック」
 現政権関係者の発言を丹念にファクトチェックした著作。野党もうやむやのままにせず、ちゃんと追求しないと。

カミーの凄まじいジャンプに絶叫する。2019/01/29 22:27

 週末は、WCスキージャンプを久々に生観戦しに、札幌へ。

 目的は、4ヒルズの完全優勝者の小林陵侑選手と今季WC未だ1ポイントの葛西紀明選手の応援。

 大倉山の風模様は、相変わらずで選手により条件がまるで違う。条件の綾で結果が極端に変わり、観る分にはとても面白いゲームになった。

 1日目のナイトゲームは、五輪チャンピオンのPOLのカミル・ストッホ選手の時に、スタートした時から、有利な向かい風がK点付近に急に吹き上がり始め、「今条件が良いから、ぶっ飛んじゃうよ~」とか軽口をたたいていたら、サッツの瞬間ぐらいから更にぶんぶん吹きだした風をとらえたカミーが、なんと9番ゲートというWCでしか設定されない低いスタート地点なのに148.5mのヒルサイズを10m以上も超える大ジャンプ。
 改修後大倉山のバッケン・レコード(今はヒル・レコードというらしい)を叩き出してしまった。

 ヒルサイズ・ライン付近で細君と観戦していたが、思わず「危ない!、危なーい!!」と大絶叫。

 目の前にまさにどんと降りてきた凄まじいジャンプ、よく着地できた。さすが、ストッホ選手、素晴らしいジャンプを見せて貰った。

 最近はジュリーの判断で、飛びすぎるとゲートを下げちゃうから、ヒル・レコードジャンプは、幸運が重ならないとなかなか見ることがないので、とても良かった。しかし、小林選手の時は、風がなかったなぁ。
 
 2日目は、我等が葛西紀明選手がいい風をしっかりと捉えて7位。
 1日目が32位で2回目進めずだったこともあり、世界選手権への派遣はダメだったが、今シーズン初めてのシングル順位で復調の兆し。
 応援にきた甲斐があった。ただ、試合後に会うことができず、細君はとても落胆。

 その間、2日間良い条件で飛べたAUTのステファン・クラフト選手(ごちそうさんのノリオ君こと永山絢斗にそっくり)は、安定したジャンプで2連勝。
 まぁ、日本人に地元(4Hills)であれだけやられたので、これぐらいやり返してもバチは当たらないってことか・・・。

 一方、WCポイントトップの陵侑選手は、風に見放されて表彰台は2日目に3位に滑り込んだのみだったが、ジャンプ自体は、悪くない内容。運が悪かっただけなので、世界選手権での優勝が期待される。

 試合後は、札幌の前の試合で、WC初の表彰台に乗っかった佐藤幸椰選手と少し話ができた。とてもチャーミングな青年だ。最近のジャンプは、鋭さを増しているので、こちらも世界選手権の活躍に期待。

 スキージャンプは、TV観戦の方が快適でウィンド/ゲートファクター等のスコアがわかりやすいが、久々に現地で観て、競技順やスタートのタイミング次第で、風の条件が全く違ってくるのが実感できて面白かった。やはり生観戦は、面白い。

 札幌では、雪靴の底が加水分解して、両足ともにお話をはじめたりとか色々とあったが、細君、長男と藤田ニコルさんそっくりの店員さんがいたスープカリーやらラーメンなどB級なグルメを堪能し、深夜東京着の1泊2日の弾丸観戦ツアーを終了、結構疲れた。

【最近の読書の覚え】
・笙野頼子著「ウラミズモ奴隷選挙」
 報道がちゃんとしないから、文学がやっているんだと笙野先生は言っている。